理研オプテック

安全コラム

荷重監視装置のしくみと理研オプテック製品の紹介 【上】

【1】 プレス機械と荷重監視装置(荷重計)

当社は20年前にプレス用荷重計の開発を行い、以後、製造・販売を行っています。

板金プレスにおける加工は上型と下型を使用し、間に材料となる金属板を入れ加圧することで板金を加工しますが、加工品の大きさやプレスの加圧方式は多種多様であり、決して荷重計を取り付けることを目的とした構造にはなっていません。しかしながら、プレスは荷重発生機であり、自動車にスピードメータがあるように、荷重発生機に荷重計は必要なものといえます。

古くはプレスの加工時にプレスフレームが伸びることを利用して、プレスの上下の伸び量を機械的に測定(巨大なマイクロメーターのようなもの)して指針表示を行う荷重計もありましたが、現在ではストレインゲージを使用した電気的な荷重計に変化してきています。ストレインゲージは歪抵抗であり、機械的な歪みにより抵抗値が変化する特性を利用して電気信号として取り出すものです。プレスの加圧時に歪みが発生するポイントにゲージを貼り付けることにより加圧量を測定することができます。

ストレインゲージを利用した製品は数多くありますが、代表的なものにロードセルがあります。

ロードセルは校正された荷重検出用トランスデューサーで、シグナルコンディショナーと表示器を組み合わせることで荷重計が出来上がりますが、プレスにロードセルを組み込むのは難しいため、通常はストレインゲージ式のセンサーをプレスのフレームなど加圧時に歪みが発生するポイントに取り付けます。この場合、校正されたロードセルではないので、加圧荷重に対するセンサー出力はプレスによって大きく変わるため、プレス加圧量と荷重表示が同じになるように校正作業が必要となってきます。

この校正作業とは、プレスのスライドでロードセルを加圧することにより、ロードセルの表示荷重とプレスのフレームなどに取り付けられたセンサーの表示荷重が一致するよう感度調整を行うことです。この作業を『キャリブレーション』と言います。これによりプレスと取り付けられたセンサーとは一体となり、プレスそのものが校正されたロードセルになります。

【2】 プレス機械用荷重監視装置(荷重計)

プレス用荷重計は基本的に ①荷重を検出するセンサー、②センサーからの信号を増幅するためのアンプ、③増幅された信号を適切に処理するための演算装置、④信号処理された結果を出力するための表示装置に分けることができます。

プレス加工時の加圧荷重を精度良く確実に検出を行うために、センサーで抽出した信号を増幅、表示するだけではなく、適切な処理を行うことで加圧荷重を知る以外に、プレスや金型の状態を把握し、異常が発生する前にメンテナンスを行うなどメンテナンス時期を知ることや加工される製品の異常検出、製品のバラツキ、生産管理を行うためのデータ収集など現在その目的は多岐にわたっています。

荷重検出された信号(x)を元に、適切な出力(y)を得るためにy=ax+bの関係が成り立ちます。これは増幅を行うための一般的な式ですが、プレス用荷重計にとって最も重要な式でもあります。

増幅度(a)は単に増幅を行うだけでなく、不要な信号(ノイズ)除去を行い、適切な増幅カーブを持ち、プレス固有の特性に合わせた増幅が不可欠です。 また、基準(b)は無圧時の基準、つまりゼロですが、どこの部分をゼロとするかが重要であり、この基準がずれることによって全てのデータに影響を与えます。 簡単に考えれば加圧していないところをゼロにすれば良いのですが、実際にプレスは360°動いていて、加圧している下死点付近以外でも加圧による振動や回転振動、他より伝わって来る振動などの影響で常に振動しています。

この振動の中から基準となるゼロ点を探し決めるための方法は最も重要な要素です。