理研オプテック

安全コラム

身近なアジアの国々における安全基準について

過去の「安全コラム」に「安全装置は邪魔もの?」という話が掲載されました。
見方によって様々なとらえ方があることは、仕方がないことなのかもしれません。
しかし、日本国内におけるプレス機械関係での災害は、年間500件以上も発生しており、(厚生労働省公表、平成30年度の労働災害発生状況より)その傾向は、過去10年間で若干の増減はあるものの大きく変わってはいないという現状に目をつぶることはできません。この中には、安全装置が適正に設置、使用されていれば、防ぐことができた災害も多く含まれているということに胸が痛みます。

プレス機械の安全に関しては、日本だけではなく世界中で取り組まれており、その基準は、国や地域によって異なります。
代表的なものでは、国際規格(ISO/IEC)、欧州規格(EN)、北米規格(ANSI/UL)などがありますが、ここでは、私たちにとって身近なアジアの国々における安全基準はどうなっているのか、特に安全装置に焦点を当てて書いてみたいと思います。

まず、私たちが暮らす日本はどうかというと、今さら申し上げることではないのかもしれませんが、国内においてプレス機械用安全装置は、「労働安全衛生法」という法律に基づく「プレス機械又はシャーの安全装置構造規格」という基準があり、その基準に適合している裏付けとして「型式検定」制度があり、検定合格品がプレス機械への設置が義務付けられている「安全装置」になります。

このような国独自の安全基準を設けている国は、中国、韓国、台湾などがありますが、この3か国に共通しているのは、自国に鍛圧機械メーカーが多く存在し、国の基幹産業を支える生産設備を提供する重要な役割を担っていることです。
そのため、機械安全に対する取り組みを積極的に行っているという背景があると思います。

しかし、上記3か国は、日本とは若干実情が異なるようです。
各国の安全基準は、すべて国際規格に準拠したものであり、さらに独自の安全基準を一部追加したものもあります。
「国際規格ISO/IEC」は、世界各国の代表的な標準化機関が参加して制定されたもので大きな影響力があります。そのため各国のローカル規格は、国際規格への整合が重要視され安全基準に対する取り組みが後発になるほど最新の国際規格に適合させる傾向があります。
ご参考までに、上記3か国の概要は下記のとおりです。

<中国:GB規格>

  • 中華人民共和国規格協会が策定する中国の国家規格、日本のJ I S規格に相当。
  • 認証基準は、ISO/IEC/EN規格に準拠
  • 強制力が異なる「強制国家標準(GB規格) 」と「推薦国家標準(GB/T) 」の2つがあり、当初、プレス機械用安全装置は、「強制国家標準(GB4584-2007) 」が適用されていたが、2017年3月23日「推薦国家標準(GB/T4584-2007) 」に変更された。

<韓国:韓国強制認証(KCs)>

  • 産業安全健康法に基づく「韓国KCsマーク認証」は、韓国産業安全公団(KOSHA)が管轄する強制認証制度
  • 2013年3月1日改定・施行され、プレス機械、安全装置を含む危険機械・器具及び保護具・防護装置等に適用される。
  • 認証基準はISO/IEC/EN規格に準拠。
  • 韓国へ輸出または製造・販売する製品は、認証取得及びKCsマーク貼付が必須

<台湾:安全衛生法・機械設備器具標準>

  • 労工安全衛生法の改訂により2013年に「職業安全衛生法」として公布、2015年より施行
  • 同法第7条の規定よりプレス機械用安全装置について型式検定制度を実施、適合品の設置が義務付けられた。
  • 検定基準は、”IEC 61496-1: 2012、IEC 61496-2:2012″(国際規格)または、”EN 61496-1:2013、EN 61496-2: 2013″(欧州規格)に準拠

     

    こうした中で日本は、古くから機械安全に取り組み安全衛生法(構造規格)が制定されました。
    JISが国際規格(ISO)との整合性が図られる中で、日本独自の基準で制定された安全衛生法(構造規格)の存在は、「ダブルスタンダード」と言われ、時代に即していないとの見方もあります。
    しかし、文化や経済事情が異なる国々で画一的な基準を浸透させることは簡単なことでなく、ハードルが高いと感じれば、定着させることが非常に難しくなります。中国においてプレス機械用安全装置が「強制国家標準」から「推薦国家標準 」へ変更されたのも、こうした事情によるものなのかもしれません。

    一方、日本の安全衛生法(構造規格)は、安全性を最重要視しながらも機械装置使用者の立場から導入の難易度、作業性などのバランスを考慮することで定着率を高める狙いがあるものと思われます。

    これまで、東アジア諸国の機械安全に関して書いてきましたが、東南アジアの国々はどうなのかというと、各国で国際規格等を参照しながら「標準化」の取り組みを行っていますが、東アジア諸国のような国独自の安全基準を制定するには至っていないようです。
    当社としては、国際規格と日本の安全衛生法(構造規格)の両方のご説明をしながら安全の啓もう活動を続け、お客様にニーズに合った製品の提供をさせていただいているところです。

    長々と思うがまま書き綴ってまいりましたので、読みにくい点が多々あったかと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。