理研オプテック

安全コラム

光による健康障害について

光はさまざまな障害を引き起こします。電磁波のうち、波長が約1nm(ナノメートル)から約1mm(ミリメートル[※1mm=1,000,000nm])までのものが光です。強度が強く、有害性が問題となる場合には、特に有害光線とも呼ばれます。

光の種類と有害光線

光は波長によって大きく3つに分けられます。眼に見える通常の光(ex.虹の7色)である可視光と、それより短波長の紫外線、長波長の赤外線です。紫外線と赤外線は、眼には見えませんが、可視光と似たような性質を持ちます。紫外線のうち、真空紫外と呼ばれる波長約190nm以下の波長範囲は、酸素分子に強く吸収されるので空気中を透過できません。その為、通常の状況下では人に対して障害を引き起こすことはありません。

一方、191nm~400nmまでの紫外線は眼に対して角膜炎や結膜炎(電気性眼炎)、白内障などの障害をもたらします。皮膚炎(日焼け)もこの紫外線領域のうちに入ります。

可視光のうち、波長が約400~500nmまでの範囲は光化学的作用が強く、網膜に対して、特に高い有害性を持ちます。この波長範囲は、眼に青く見えることから「青光(ブルーライト)」と呼ばれます。

溶接光による眼の損傷

溶接の際に発生する光は、2種類に分けられます。加熱のプロセスに伴って発生する光、すなわちアークや炎などの光と、溶融した金属が発生する光です。

アーク溶接やプラズマ溶断の場合、そのアークは、一般に強い光、特に紫外線と可視光を放射します。実際、作業現場ではこの紫外線によって多くの角膜炎・結膜炎(紫外眼炎)・皮膚炎が発生しています。また、可視光による網膜障害の事例も報告されています。一方、赤外線は比較的弱いと考えられ、実際に赤外線によって障害が発生したとする報告はありません。

紫外眼炎は、雪目と同じものです。溶接が原因の場合、電気性眼炎とも呼ばれます。症状は、異物感(目の中がゴロゴロする)、眼痛(眼が痛い)、流涙(涙が出て止まらない)、羞明(まぶしい)などです。ただし、紫外線への曝露最中および直後は、異状が見られず、こうした症状は通常、曝露から数時間後に現れ、一日程度で自然に消えます。

(社)日本溶接協会安全衛生委員会が行ったアンケート調査によれば、アーク溶接作業場で働く作業者の86%が、過去に紫外眼炎の経験を持ち、さらに45%は、月1回以上の頻度でこれを経験しているデータが出ています。

溶接作業の現場では、青光障害にも注意する必要があります。青光障害は、短波長の可視光(=青光)の光化学的作用による網膜の損傷です。症状は霞視(かすんで見える)、暗点の出現(視野内の一部が見えない)、視力の低下などです。症状は可視光への曝露とほぼ同時に現れ、通常だと数週間から数か月の間に徐々に改善しますが、最終的には消える場合と残る場合があります。遮光保護具を用いず、裸眼で溶接アークを見た結果発生した青光障害の事例が数例報告されています。

有害光線が引き起こす眼の障害

紫外線による遅発性の障害として、白内障と悪性黒色腫を含む皮膚がんがあります。一般に発生している白内障と皮膚がんの少なくとも一部は、紫外線が原因だと考えられています。溶接作業者の集団に関しては、これらの障害の調査報告はありませんが、その罹患率(発生率)が通常より高いことは十分考えられます。

赤外線による障害として、白内障(赤外白内障)があります。ガラス作業の現場では、ガラス工白内障として有名です。通常、強い赤外線へ20年以上曝露した後に発生します。ただし、溶接作業場では通常、赤外線の強度がさほど強くないので、赤外白内障の発生はないと考えられています。

レーザ溶接の際には、溶接部に生じるプラズマ(プルーム)が光を放射します。その強さは、条件によって大きく異なり、状況によっては非常に危険なレーザ光の反射光が周囲に放射される可能性があります。レーザ溶接に関しては又の機会に書きたいと思います。

有害光線から眼を守る保護めがね

「保護めがね」には大きく分けて飛来物等を対象にした「保護めがね」、有害光線を遮光する「遮光めがね」、レーザ光を遮光する「レーザ用保護めがね」があります。

「保護めがね」といってもたくさんの種類があり、それぞれに必要な性能を有しています。

作業環境や用途に応じて正しい選択をすることが重要になります。

保護めがねの規格として、「JIS T 8147 保護めがね」と「JIS T 8141 遮光保護具」があります。「JIS T 8141 遮光保護具」では「JIS T 8147 保護めがね」の各種性能規定に加えて、紫外線、赤外線、可視光線についての遮光性能が規定されています。遮光度番号は薄い濃度から順に#1.2~#16まで規定されています。

各溶接等の作業別に応じた適切な遮光度番号は別表の「遮光保護具の使用基準」に記載されていますので、参考になさってください。

作業者は作業内容に適した「保護めがね」を選択し、使用することと同時に、作業者以外でも、作業場に立ち入るすべての人に「保護めがね」の装着が、大切な目を保護するうえで重要であることを皆様に忘れないでいただきたいと願っています。